Manic Monday:天才プリンスが仕掛けた音楽史上最大のトリック

曲名:
Manic Monday(マニック・マンデー)

アルバム名:
ORIGINALS(オリジナルズ)

作者:PRINCE(プリンス)

ヤング寿限無の衝撃

1986年に全米で大ヒットを記録したガールズバンド・バングルスの「Manic Monday(マニック・マンデー)」。

最近の若者は知らないと思うが、当時、洋楽を専門に扱ったベストヒットUSAという音楽情報番組(司会、小林克也)が夜中に放送されていた(調べたら今もBS朝日で毎週放送しているらしい・・・おじさんの方こそ知らんかった)。
その頃、特別洋楽に興味があったわけもなく何気なく番組を流し観していると、「今週のビルボードヒットチャート第2位は・・・バングルス、Manic Monday!」。これが長年私を虜にし続ける名曲との運命的出会い。音楽に疎かったヤング寿限無のハートを打ち抜く素敵なメロディ。ボーカルのスザンナ・ホフスの可愛らしさも相まって、数分の間、夢心地でプロモーションビデオを眺めていた。曲が終わった後も頭の中でメロディが反復し「まーにっくまんでーーーー」と自然に口ずさんでいた。その興奮冷めやらぬまま「それでは今週の第1位は・・・プリンスのKISS!」。
「へぇープリンス?あのパープルレインの?」その当時、プリンスに対してその程度の認識しか持ち合わせていなかったが、「パープルレイン」は当時全米24週間1位を記録したモンスターアルバムにして、その主題曲であり、私でも知ってるくらい有名な曲だった。「パープルレイン」は素敵な曲という印象があったので、その流れを期待しながら曲が流れるのを待った。
と、ところが・・・プロモーションビデオが流れた途端、これまでの状況が一変した!天使のメロディが、悪魔のリズムに陵辱され阿鼻叫喚の地獄絵図と変わったのだ!
「タリタリタリタリタン!ああっう!」上半身裸のプリンスがいやらしい喘ぎ声と共に登場・・・そしてクネクネと爬虫類的な動き(ダンス?)で椅子に座り一人ギターを弾くバンドメンバーのウェンディの回りを徘徊し、濡れた唇と少女漫画の如くつぶらな瞳で、ブラウン管越しの青少年を舐め回す。
「うわ!きもい悪い!」私は光の速さでテレビのスイッチを切った!
キモイ、なんてキモイ奴なんだ!せっかく「Manic Monday(マニック・マンデー)」の清らかな気分に浸っていたのにーーーー!
例えるなら、乙女の純情を汚され辱められた気分。
それ以来、プリンスを嫌悪するようになった。
今では信じられないが本当に毛嫌いしていたのだ。

でも仕方がないだろう?
誰だって、そう思うだろ?
突然、あんなビデオ見せられたら・・・。
学校帰りの女学生が、突然不信者にチ○コを見せられた気味悪さ・・・と言えば分かって貰えるだろうか?

こんなに説明しても分かって貰えないのなら、実際、youtubeで公開されているプロモーションビデオで是非見比べて頂きたい。

左はバングルスのマニック・マンデー、右がプリンスのKiss。
左から順にご覧ください。

バングルス「Manic Monday」

プリンス「Kiss」


どうです?
お分かり頂けただろうか?
偶然か、神の悪戯か、全米チャート2位と1位に並んだ好対照な曲。

だが、それは偶然でも、神の悪戯でもなかった。
それは全米を震撼させた悪魔の目論み。
天才プリンスが仕掛けた音楽史上最大のトリックだったのだ!

マニック・マンデーの作者は「クリストファー」。
実はこのクリストファーなる人物。
黄色いクマの飼い主・・・ではなく、プリンス主演映画「アンダー・ザ・チェリー・ムーン」の主人公と同名。
そう・・・そうなのだ!

クリストファーとはプリンスの変名。
なんてことだ!
実は「マニック・マンデー」とは天才プリンスがバングルスに提供した楽曲だったのだーーーーー・・・・・

ね?
ビックリでしょう?

原曲のプリンス版「マニック・マンデー」が収録された「オリジナルズ」アルバムの発売に合わせ、バングルスのスザンヌが当時を振り返りインタビューに答えていた。

プリンスとのコラボについてスザンヌは、次のように当時を振り返っている。

マジカルな感じだったわ。素晴らしいアーティストがバングルスのライブを観たいと思ってくれて、ステージに上がって一緒に演奏してくれた。まるで『王子』様が舞踏会に来て、ダンスを踊って下さいと申し込んでくれたみたいだった。言ってる意味わかるでしょ? おとぎ話みたいだったわ。

https://rockinon.com/news/detail/187233

聞いたかい?
「まるで『王子』様が舞踏会に来て、ダンスを踊って下さいと申し込んでくれたみたい・・・」だって・・・プリンスだけに・・・・・・ん?変態王子の間違いでは?
いや失礼。

しかし、この一件以来、私はプリンスの音楽的才能の虜になった。
あの当時、テレビのスイッチを爆切りしていた私を、ブラウン管の向こう側からニヤニヤと眺めほくそ笑んでいたプリンス。
なんという悪魔的目論み!
圧倒的才能があるからこそ成し得た全米1位2位の大偉業。
これが全米と寿限無を手玉に取った壮大なトリックの全貌なのだ。

夢は叶ったが・・・

あのマニック・マンデーをプリンスが歌っているかもしれない!マニック・マンデーの作者がプリンスと聞いて俄然期待に胸が膨らんだ。あの素敵な曲をプリンスはどんな風に歌い上げるのだろうか?女性っぽいファルセットだろうか?地声だろうか?出来れば地声で歌って欲しい!でも地声は無いだろうな・・・。

そんな事を思いながら、もしかしたらDEMO音源が出回っていないか、youtubeを探しまくったがヒットするのは、同じDEMOでもプリンスがプロデュースしたガールスグループ「Apollonia 6」版マニック・マンデー・・・。
音が悪いせいかも知れないが、スザンヌのボーカル、バングルスの演奏には到底及ばない印象だった。

結局、プリンス版マニック・マンデーは見当たらず・・・。
もしかしたらプリンス版は存在していないのか?

そんな中、「オリジナルズ」の発売がアナウンスされ、その曲目に目を通すと、なんと、なんと!?、なんと!!!「  Manic Monday 」の文字が!
私は狂喜乱舞しながら、妄想が決壊したダムのように溢れ出した。「ああ、プリンスが歌うマニック・マンデーが聞けるのか!」(この辺の下りはYou’re My Loveと一緒)

発売日、amazonから届いたCDをPCに入れ、スピーカーから流れ出た音は・・・。

おお!地声で歌っている!
夢が叶った!・・・
うん・・・。
でも・・・。
なんか、地味な印象・・・。
プリンスの歌い方はあまり感情が込められていない印象・・・。
他アーティストに渡すためのガイドボーカル的な歌い方なのかな?
でも曲はバングルスと変わらず素敵過ぎる!
まあ、期待が大きすぎたのだろう・・・。
プリンス版バングルスが聞けただけ満足としよう・・・。

そんな、スッキリしない感想を持ちながら過ごしていたある日の事、車のカーステレオで「オリジナルズ」のアルバムを聴いていた。
そしてマニック・マンデーが流れた時、なんと天使が舞い降りたのだ!
「いいね。プリンスのマニック・マンデー」と妻。
「えっ、そう?でもガイドボーカル的な素っ気ない歌い方じゃない?」と訪ねたら、「いや、そこがいいんでしょ!」と日頃プリンスに興味を示さない妻の思いがけない言葉に促されて、家に帰って今一度聞き直してみた。
「なるほど、そこがいいのか・・・」
ピアノを全然弾けない音楽的才能ゼロの私にとって、ピアノをそこそこ弾ける妻の言葉は強力な説得力で曲の印象まで変えてしまった。
そうだ!妻の言う通りだ!
プリンスは別に手を抜いて歌っていたわけじゃない。
この歌い方がプリンスの解釈であってベストパフォーマンス。改めて聞き直せば「良い雰囲気」を醸し出してる!
「ああ、なんて素敵な曲だ、なんて素晴らしいボーカルなんだ・・・流石天才プリンス。また私は欺されて、またあなたは雲の上でほくそ笑んでいたのか・・・」

ありがとうプリンス。
こんな素敵な曲を残してくれて。
ありがとう妻!
感性の扉を開いてくれて。

今では、好きなプリンスの曲ランキングの第2位に「マニック・マンデー」は君臨している。好きで好きでたまらない神からの贈り物「マニック・マンデー」。

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