Kiss・雷に打たれる衝撃!極限まで削ぎ落としたポップミューッジックの傑作!

曲名:
Kiss(キッス)

アルバム名:
Parade(パレード)

作者:PRINCE(プリンス)

前回「Manic Monday」で投稿した通りだが、「Kiss」のプロモーションビデオのお陰でプリンスを毛嫌いし、当然のように曲自体も嫌悪していた。

なんで、こんな曲がヒットするのだ?アメリカではお茶の間で変態ビデオが流れるのか?!アメリカという国が心底理解できない!即刻放送禁止にすべきだ!一本のミュージックビデオの影響は、終戦以来長く続いていた日米の良好な関係に暗い陰を落とした。このままでは国際問題に発展しかねない・・・もはや「プリンス嫌い」を治癒する処方箋は何処にもないように思えた。

そんな折り、アルバイト先の造園設計事務所で、いつものように製図を引きながら黙々と作業をしていた私にまさかの出来事が起こった!

FMラジオからプリンスの「KISS」が流れたのだ。
(うわ~参ったな・・・)
仕事中なので耳を塞ぐわけにもいかず、また自分一人の都合でラジオを止めるわけにもいかなので、このまま変態王子の為すがまま蹂躙されるしか術はないのか!?私一人の被害で済めばいいが、事務所のスタッフ一同も悪魔の囁きに毒され、職場が険悪なムードになれば作業に支障をきたしかねない・・・一瞬の間に様々な思考が過ぎった。

しかし時間は誰に対しても平等に流れる。そして誰の耳にも平等に音楽は流れ込む。
「タリタリタリタリタン!ああっう!」上半身裸のプリンスがいやらしい喘ぎ声と共に登場・・・しなかった。当たり前だ。これはラジオなのだから。

悪魔的猥雑な映像がないお陰で、はじめて純粋に音楽が耳に飛び込んできた。
そして雷が落ちた。
「な、なんじゃ!?この曲は!!」
余りにソリッド!余りにタイト!余りにポップ!
ともすればノイズの様なリズムが全身に電流を流し体を揺さぶる。

「な、なんてカッコいい曲なんだ!」

私はその場で作業を止め、ラジオから流れる音楽に放心状態となった。
正に雷に打たれる衝撃だった!

なんて事だ!
今まで「あの変態的ミュージックビデオ」のせいで、曲にも変態フィルターが掛り、曲の神髄へと辿り付けなかったのだ!
なんて事だ!
「あの爬虫類的ダンス」のせいで、「極限まで削ぎ落としたポップミューッジックの傑作!」を避けて通り過ぎていたのだ!
なんて事だ!
ん?
じゃあ、何であんなビデオ作ったの?
曲にマイナスイメージを与え、セールスに打撃を与えるだけではないか!?

いや、「Kiss」は全米ナンバーワンの大ヒット曲。
奴らは気が付いていたのだ!
上辺に欺されて真実を見落としていた愚かな私と違い、ヒット路線とは真逆の先鋭的な音を理解し、とっくの昔に台所や居間やベットの上で踊りまくっていたのだ!

流石アメリカ!
凄いぞアメリカ!
偉大な国アメリカ!
アメリカ万歳!

もっとも胸毛にセクシーさを感じるお国柄なので、「あの変態ビデオ」も普通にセクシーな目線で楽しんでいたのかもしれない。年を重ねチューの1つや2つも経験し、酸いも甘いも噛み分けた今なら、「あの変態ビデオ」に拒否反応が起こらず普通に楽しめる。プリンスにちょっかいを出されるギターのウェンディの表情も可愛らしく、なかなかよく出来たビデオだと思う。映像センスはまだまだ理解しがたい部分もあるが、唯一無二の世界観は十分感じ取れる。やはりプリンスは何をしても天才だ!

えっ、映画?
「Kiss」が収録されたアルバム「Parade(パレード)」は一応、プリンス主演映画「アンダー・ザ・チェリー・ムーン」の体裁を取っているが、肝心の映画は、その年の「最低映画」を決めるゴールデンラズベリー賞を総なめという天才にとってあるまじき不名誉な評価。
いやいや、天才の感性に時代が追いついていないだけ・・・。
「Kiss」を理解したアメリカでさえ「アンダー・ザ・チェリー・ムーン」の真価を理解できていない。
そこは凡人には理解できない天才の領域。
天才の感性に届くまで時間がかかるのだ!
私が「Kiss」を理解するのに時間が必要だったように。
いつか時代が追いつく。
いつか必ず・・・

・・・と言い続けて30数年。
未だ時代は追いつかず・・・
天才とは孤独なものだ。

Prince – Kiss (Official Music Video)

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