【アルバム】Lovesexy・プリンスミュージックの金字塔!王子様は裸で現れた!

アルバム:Lovesexy(ラブセクシー)
  1. Eye No
  2. Alphabet St.
  3. Glam Slam
  4. Anna Stesia
  5. Dance On
  6. Love Sexy
  7. When 2 R in Love
  8. I Wish U Heaven
  9. Positivity

寿限無の洋楽への入り口は「ディズニー音楽」だった。
某一流企業に勤める従兄弟が、東京ディズニーランド開園前の関係者招待に誘ってくれたのが「ディズニー音楽」との出会い。これまでディズニーは子供が観るものと思い込んでいたので、当然、音楽も大人が聴くに堪えない子供向けだと思っていた。いや、私だけじゃないのよ、これが・・・。学校の友人に「ディズニー音楽スゲーいいよ!最高にクールだぜ!」と話たら、「ああ、♪こーじーかーのバンビ!♪でしょ?」と返された。はあ?何なんだ、その、ふにゃけた歌は!・・・実は私もディニー音楽と言われたら真っ先にそのフレーズを思い浮かべる・・・しかし!そんな歌は「バンビ」には流れない!サウンドトラックの何処にも見当たらない!第一バンビの音楽は余りにも気高く美しい!・・・一体何なのだ!・・・「♪こーじーかーのバンビ!♪」。(調べたら、ディズニー映画バンビのヒットにあやかって日本のビクターレコードで制作された童謡だった。なんだ、ディニー関係ないじゃん!)

子鹿のバンビ

話をディズニーランドに戻すが、初めてのテーマパーク体験は驚きと感動の連続だった。中でもパーク内で流れるディズニー音楽に聴き惚れた。生来、乙女チックな寿限無のハートを虜にしたのだ。
その後、レーコード屋を巡り、ディズニー関連のサウンドトラックを探し回ったが、その当時は需要が少なかったらしく殆ど販売されていなかった。入手できたのはシンデレラ・バンビ・わんわん物語・眠れる森の美女の英語版サウンドドラック、白雪姫に至っては映画の音声を録音した2枚組レコードという不思議な形態(何需要か?)で、純粋なサウンドトラックは存在していなかった。
そこで寿限無は輸入盤専門店、渋谷のタワーレコードに足を伸ばし、期待通り、目にも美しい白雪姫のイラストが描かれたLPレコードに巡り合うことになる。

Someday My Prince Will Come(いつか王子様が)

生来、ロマンチストの寿限無は白雪姫のサウンドトラックに夢中になった。
「いつか私の王子様が現れる・・・」

その数年後、久しぶりに訪れた渋谷のタワーレコードで、乙女(?)の夢物語が現実になった・・・
そう、王子様が現れたのだ・・・。

それは白馬に跨がる王子様・・・ではなく、一糸まとわぬへ変質者の出で立ち・・・でもなく、音楽ファンが待ち焦がれた正真正銘の王子様だった。
友人と2人、タワレコの入り口に差しかかった瞬間、異様な光景に足を止めた。
入り口のディスプレイ一面に・・・

・・・このジャケットが並べられていたのだ!
友人は困惑したような、呆れたような表情を浮かべていたが、私はその瞬間「一生あなたに着いていく」と密かに決意を表明していた。
こんなジャケット誰が見ても大笑いするところだが、彼の眼差しを見よ!真剣そのものだ!一糸まとわぬ生まれたままの姿で何を見つめるのか?!その眼差しは、ツッコミ無用の笑ってはいけない雰囲気を醸し出し、まるで乙女の様だ。そう彼もまたロマンチスト。信じられないだろうが、多分、いや、間違いなく、我々を笑わせようという気など微塵もない。彼の音楽を聴いていれば分かるが、根は真面目な青年なのだ。

乙女ちっくなプリンスはさておき・・
某国では店頭に並べられなかったり、ズボンを履かされたり(写真の上から描かれた)、何かと物議を醸す全裸ジャケット・・・
これを入り口のど真ん中に、デカデカとディスプレイしたタワーレコードの漢意気。

タワーレコードは漢(おとこ)だった。

そして寿限無も、その漢意気に答えた。

プリンス通算10作目の記念すべきアルバム「Lovesexy」を手に、誇らしく、気高く、そして口元に笑みを浮かべながらレジへと向かった。

色んな意味でプリンス信仰を決定付けたのが、本アルバム「lovesexy」である。

家に帰り意気揚々とCDを再生した・・・そして、瞬く間に睡魔に襲われた。
難解・・・そう難解過ぎたのだ!
天才の音が凡人寿限無には難解過ぎて、ついつい居眠りをしていたのだ。
そりゃ、そうだろう。
これまで世界で愛されるディズニークラシックの名曲と戯れていた耳に、天才プリンスの音は解読不能な暗号の様に思えた。
だが、プリンスが超天才なのは分かっている。
寿限無が超凡人なのも分かっている。
だから、その後は何度も何度も再生を繰り返し、Lovesexyを流し続けた。
天才の感性を理解するため、凡人は努力し学習し続けるしか方法はない。その先にある天才にしか聞こえない新しい音の世界を夢見ながら・・・
歌詞に向き合い、細かい1つ1つの音に向き合い、その意味を探り続けた。

そして遂に暗号の謎が解けたのだ。

凄い!凄い音だ!全ての楽器、ボーカル、バックボーカル・・・調和を拒絶したそれぞれのパーツが激しく主張し合いながら、1つの曲を紡ぎ上げている。
複雑怪奇!変幻自在!縦横無尽に部屋の中を飛び交うサウンドの洪水は、正に天才による変態エレクトリカルパレード!(いや、最大級の賛辞を送りたいが適切な表現が見つからないだけ)
中でも凄いのがアルバムタイトルでもある 6.Lovesexy。未だに全貌を捉えられない凄まじい構成。この曲を聞く度に、まるで自分が天上にいる錯覚に陥る才気溢れる楽曲。そして珠玉の傑作バラード 7.When 2 R in Love。抑揚が少なく単調な印象にも関わらず、極上のロマンチックを醸しだし、曲の終わりには感動で胸が締め付けられる。(その後、日本語対訳を入手し歌詞の内容を知り、そのドスケベェなロマンチズム、LoveとSexyが融合した比類無き世界観に再度打ちのめされる。)

プリンスの曲全体に言えることだが、歌(曲)を楽しむというより、音そのものを楽しむ音楽本来の意味を思い起こさせてくれる。このアルバムは、その傾向がより顕著に現れている。そして、この只でさえ奥行きの深いアルバムに、より深味を与えているのが、もう一枚のアルバムの存在。発売直前にプリンスの意向により破棄されたスーパーファンクアルバム、その名も「ブラックアルバム」。その発売中止の僅か数ヶ月後に「Lovesex」が発売されるのだが、「ブラックアルバム」が怒りの感情とすれば、「Lovesexy」は愛の感情。「ブラックアルバム」が黒なら、「Lovesexy」は白・・・そんな相反す性質を持つ両アルバムは、表裏一体、2つ1つの存在感を醸し出す。
「Lovesexy」を聴けば常に「ブラックアルバム」の影が過ぎり、「ブラックアルバム」を聴けば常に「Lovesexy」の光へと誘われる・・・。

本アルバム、ジャケット、音作り以外の部分でも並々ならぬ拘りを見せる。
曲を飛ばさず最初から最後までアルバム全体の世界観を聴いて欲しいプリンスの意向を汲み、全9曲で1曲のカウントに設定したお陰で、曲送りが出来ない仕様・・・なんて傍迷惑・・・いや斬新な作りなのだ。
なので、曲を分割したCDを新たに制作して聴いて・・・いや、決して天才の意向を無視した分けでは無く、最後の方の曲を聴くため全部通して聴くのが面倒・・・いや、疲れる・・・いやいや、なんだろう、うーーーん・・・

まあ、ただ1つ言えることは、天才の思考は凡人には計り知れない・・・ってこと。

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