寿限無のプリンス人生を語る時、絶対に外せないのがプリンス不屈の名盤「Sign ‘O’ The Times(サイン・オブ・ザ・タイムズ)」。
なぜなら、このアルバムから寿限無のプリンス人生は産声を上げたのだ!
それまでの私にとって音楽は「聴いて楽しむもの」。当たり前のことだけど、それ以上でも以下でもなく、音楽に対して特別なこだわりはなかった。
それが、あの日、家電量販店の店頭ワゴンで在庫処分品として叩き売られていた「本アルバム」を手にし、家のスピーカーから音を流した瞬間から、これまで「音楽」に抱いていたイメージは、全く別のものに生まれ変わった。
それは単なる気まぐれだったのか?
気の迷いだったのか?
それとも運命だったのか?
単に、2枚組で他のセール品よりお得感があったから?
取りあえず、2曲の全米TOP10ヒットを含むアルバムだったから?
セカンドシングル・U Got The Look(ユー・ガッタ・ザ・ルック)は、前回に投稿した通り、好みのタイプでは無かったが「カッコいい」認定をした曲であり、巷で天才と噂されるアーティストのアルバムを1つくらい所持するのもクールかも知れない・・・。
などなど、様々な思惑が混じり合った結果、値引き価格1000円ポッキリのアルバムを手にしたのだ。
そのアルバムが、今後の人生において大きな存在となる「運命」とも知らずに・・・。
突然だけど、プリンスとプロレスって似ていると思わない?
寿限無はプリンスとプロレスが大好物なのだが、両者には興味深い共通点があるのだ。
4文字で先頭が「プ」、最後が「ス」で終わる・・・いやいや、そんなことではなく、もっと哲学的な共通点。
寿限無は、子供頃、アントニオ猪木のブリッジ力に魅せられて以来、今日に到るまでプロレス観戦(観戦と言ってもTVが殆ど)を趣味にしているが、プロレスほど考えさせられる「もの」はない。
プロレスって一体何なのだ?
プロレスの他に、その存在意義を問い続ける「もの」はあるだろうか?
なぜ「もの」と表現したかと言うと、プロレスを分類する妥当なジャンルが見当たらないからだ。
例えば「サッカー」を観戦している人が、「サッカー」って一体何なのだ?なんて疑問は持たないし、持つ動機もない。なぜなら、「サッカー」はスポーツのジャンルに分類出来るからだ。TVのスポーツニュースでも当然「サッカー」の結果は放送されるのに対し、プロレスの対戦結果をスポーツニュースで放送されることは無い。なぜならプロレスはスポーツでは無いからだ。
たまにプロレスをスポーツと呼び、プロレスラーをアスリートと呼ぶ人がいるが、その言葉を聞く度に違和感を覚える。
プロレスは「スポーツ」に分類するには余りにもルールが無茶苦茶だ。スポーツとはルールが厳格に決められているからこそ、公平に競い合うことが出来るが、プロレスには5秒間は反則が許されており、その間ならパイプ椅子で殴打しようが、噛みつこうが、ルール無用の戦いが展開される。ゆえにプロレスは絶対にスポーツではない。
ならば格闘技だろうか?
いや、格闘技と呼ぶには余りにも面白過ぎる。そして余りにもハートフルだ。プロレスの基本はお互いの攻撃を受け合い、お互いが輝きつつ試合を盛り上げ、その上で勝敗を決する。相手の攻撃をまともに受け、耐える力を競う時点で格闘技ではない。格闘技の基本は一撃必殺。攻撃を受けた瞬間にKOされてしまう。
ならエンターテインメントだろうか?
プロレスはお客様を楽しませることを第一とする点からエンターテインメントの側面が濃厚だが、エンターテインメントと呼ぶには余りにも危険過ぎる。体を傷付け、命をすり減らし、大怪我も覚悟で試合に臨む。実際、高山選手は頸椎を骨折して、首から下を麻痺する大怪我を負った。ヒロム選手も首を骨折して長期欠如を余儀なくされた。
プロレスをエンターテインメントと呼ぶには、余りにも選手に対する敬意が足りない。
ならばプロレスとは一体何のか?
寿限無が長いプロレス問答で出した答え・・・それは・・・
プロレスはプロレス。
馬鹿みたいに当たり前の答えだが、プロレスはプロレス以外に表現のしようがない。
プロレスはどんなジャンルにも属さない。プロレスそのものがジャンル。
プロレスラーもプロレスラーと呼ぶのが最も敬意を表すに相応しい呼称なのだ。
プリンスの話をしているのに、なぜ、プロレスの存在意義を語っているのか?お前は何が言いたいのか?・・・と疑問に感じていると思う。
しかし多くのプリンスファンならば、寿限無が言いたいことは大体察しが付いていると思う・・・
音楽にはロック、ソウル、ジャズ、フォーク、カントリー・・・など、様々なジャンルに分けられているが、プリンスは一体どのジャンルに当て嵌まるのか?と考えた時、これまで存在する既成のジャンルでは、どれも違和感を禁じ得ない。
プリンスの音楽はロックなのか?ソウルなのか?ジャズなのか?まあ、カントリーではなさそうだ・・・けど、どれも、プリンスの音楽を表現するのに、しっくり来るジャンルは見当たらない。
しかし、それは私だけが抱いていた葛藤ではなかった。
プリンスファン全員が抱える葛藤だった。
プリンスのジャンル分け問題は音楽業界も例外ではなく、むしろ音楽業界、とくにレコードを販売する時にジャンル分けするプリンス担当者こそ、この葛藤に悩まされ眠れない日々を過ごしていたのだ。
しかし、そんな苦しみの日々に突然、光が差し込んだ!
突然、素晴らしいアイデアが閃いたのだ!
こうしてアルバム「Sign ‘O’ The Times(サイン・オブ・ザ・タイムズ)」の帯に表示するジャンルが決定した。
そのジャンルこそ・・・
「プリンスミュージック」
レコード屋で「プリンスミュージック」なるカテゴリを見た時、私は心の中で喝采を挙げ、担当者に盛大な拍手を送っていた。
他のどんなジャンルにも属さない独自の音、独自の世界観に彩られた唯一無二のアルバム「Sign ‘O’ The Times(サイン・オブ・ザ・タイムズ)」。
つまり、そんな感じのアルバムなのだ。
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